東北の未来 より豊かに 民間目線で提言 インフラ事業盛り込む(建コン東北支部)
[2018/6/14 宮城版]
建設コンサルタンツ協会東北支部(菅原稔郎支部長)は東北地方の未来を見据えた提言をまとめ、13日に仙台市内のホテルで説明会を開いた。「TOHOKU復興から創生そして近未来への提言」と題し、東北地方の産業振興やインフラ整備、環境保全などに関する課題や施策をまとめた。今後、東北6県および仙台市と意見交換する際、提言書として提出する方針だ。
提言の説明会には東北各地から集まった同支部会員ら約190人が出席した。あいさつした菅原支部長は提言をまとめた理由について「当協会は行政機関と意見交換する際、事業量の確保を要望している。お願いするばかりではなく、主体的な取り組みが必要だと思い、東北の成長、発展に寄与する提言を発信することにした」と説明した。
提言は4つのワーキンググループと若手の会の5つの部会に分かれ、昨年6月から約10カ月かけてまとめた。それぞれ東北地方の現状や課題を分析し、より良い社会形成に役立つ目標、達成に向けた具体的事業などを話し合った。その内容は、約70ページにおよぶA4判の冊子に編集した。
東北地方では近年、人口減少や震災復興後の事業減少が問題視されている。その現状から東北地方を活性化させるため、民間の建設コンサルタント技術者の目線で提言をまとめた。建設分野にとどまらず、地域のコミュニティ形成や産業発展、農林水産業の振興、防災・減災など多岐にわたっている。
提言としてまとめた冊子は、2030年度末を目標とする第1部の「創生編」と、2050年の社会情勢を勘案した第2部の「近未来編」で構成されている。
創生編では東北地方における15の課題を抽出し、それを打開する15の目標を掲げた。農林水産業の競争力の強化や、中山間地域の孤立化対策、防災先進社会の構築などを挙げている。
目標を達成する10のインフラ事業を挙げ、具体的な40のプロジェクトも示した。道路ネットワークの整備では新庄石巻道路や国道48号の高規格化などを盛り込んだ。東北の玄関口となる仙台空港の利活用も検討し、仙台空港をハブ化して東北各地の空港に人の流れを誘導する空路整備を訴えている。
また、物流の拡大に欠かせない拠点港湾の整備推進や、AI(人工知能)を活用したインフラの長寿命化、防災・減災対策なども提案している。
一方、近未来編では約30年後の社会情勢を想像し、東北らしい都市空間整備やグリーンインフラ整備などのあり方を見据えた。車が空を飛ぶことを想定した新たな交通システムの整備や、東日本大震災の経験を世界展開する防災対策などを盛り込んだ。この中では東北の誇りとして「人とふれあう温かさ」「自然とふれあう爽快さ」を重要視している。若手部会からは柔軟な発想として、地球規模、宇宙からの視点による提言が出された。
同協会はこの提言を盛り込んだ冊子2000部と、概要をまとめたパンフレット5000部を製作した。公共機関や図書館、大学などで配布する。5月31には東北地方整備局に対し、提言書を提出した。今後、行政機関に対し、例年行っている意見交換の場で提言書を提出する方針だ。