大区画増加し整備率67.7% 30年度6市町8地区で127ha(県農地整備課)

[2018/6/12 栃木版]
 県農地整備課は11日までに、30年3月末現在の県内の圃場(水田)整備状況をまとめた。農業振興地域における農用地区域(農振農用地)8万1927.4haを対象とした全体の整備率は67.7%の5万5441.7haで、このうち50a以上の大区画率は11.6%の9543.6haとなった。30年度見込みでは0.1ポイント上昇の5万5568.7haを試算しており、127.0haの増加。具体的には、大区画を含め下田原北部(宇都宮市)、田川流域(日光市)など6市町8地区の概成などによる増加としている。

 県は27年度から、要整備面積をこれまでの20a以上から30a以上に引き上げるとともに、現在の整備の標準区画が50a以上となっているため実情に合わせた。また、農業振興地域の農用地等面積を5年ごとに見直しており、27年度の実績を採用している。

 面積の引上げは、農業生産力をアップし国際競争力を高めていくことが目的で、30a以上の区画は畦畔を除去することで50a以上の大区画化への転用も可能としている。29年度の大区画50a以上は27年度に比べ179.6ha増加、このうち畦畔除去などにより1ha以上も1647.7haと2カ年で33.7ha増えた。全体の比率で2.0%となっている。

 市町別で整備率を見ていくと、第1位は小山市の99.4%。2位が芳賀町94.8%、高根沢町が3位で94.1%となっており、これら3市町が90%を超えている。

 農業振興事務所別に整備状況を見てみると、河内は宇都宮が県平均を上回ったものの、30a以上に見直した上三川町は平均を下回った。上都賀、芳賀、下都賀、塩谷南那須は進んでいる市町と遅れている市町が混在している格好だ。那須と安足の市町は、おしなべて平均を下回っている。

 市町村合併後の変化では、水田整備率がほぼ100%だった二宮と合併した真岡が5050haで83.9%。整備率の進んでいた大平と県内の平均的な整備率だった都賀、藤岡、西方、岩舟と合併した栃木は74.0%の4964haと、平均を6.3ポイント上回った。

 水田面積が1000ha以上で、整備率が90%を超えているのも、小山、芳賀、高根沢の3市町。小山は4899.9haのうち、整備実績が4870.9haで大区画は構成比30.6%を占める1500.1haと進んでおり、宇都宮の1691haに続き第2位、僅差で真岡が1426haの第3位となっている。大区画の整備実績は、これら3市だけが1000haを超えている。

 30年度の見込みでは、宇都宮、日光、矢板、大田原、壬生、那珂川の6市町が上昇し127.0ha増加すると試算した。29年度実績の109.4haに比べ17.6ha多い。最も増加面積が広いのは、壬生の47.0ha。下稲葉の整備によるもので、うち50aの大区画化が28.6haを試算した。宇都宮は下田原北部と上石那田で30a以上が25.2ha、うち50a以上でも15.9ha増加を試算。日光は30a以上が29.6ha増加するとし、田川流域と山口の整備によるもの。このうち50a以上の大区画は15.3haを試算している。

 矢板の2.5ha、那珂川の12.2haは、中山間地域総合整備で、矢板が高原、那珂川は馬頭中部の整備によるもの。両市町とも50a以上の整備面積の比率が極端に低く、矢板が1.2ha、那珂川は0.6haとした。

 圃場整備における県営事業は平成元年度に、高生産性大区画圃場整備事業(低コスト)を導入し、大区画による基盤整備に着手した。同事業は9年度に廃止されたものの、その後、換地業務で分散している農地を所有者ごとに1カ所に集積させる担い手育成基盤整備事業に引き継がれ、大区画による圃場整備事業が現在でも進められている。

 国は大区画化を推進するため、24年度補正予算で団体営事業に農業基盤整備促進事業を創設。すでに区画が整備されている畦畔除去に充当することで、区画の拡大を企図した。同事業は26年度、県営事業にも拡大、現在は農地中間管理機構と連携した農地耕作条件改善事業に引き継がれている。

 県は28年度から、一つの圃場が3ha以上のスーパー大区画による実証実験を下野市の武名瀬川地区において開始、今年度は下ヶ橋河原地区(宇都宮市)への導入を計画している。武名瀬川地区では従来の大区画の畦畔を撤去し、28年度に2.6ha、29年度には4.2haまで拡大し、水位センサーによる自動給水栓装置を設置。削減される労力や自動給水装置設置の投資効率の検証など、約4年をかけて結果を取りまとめていく見通し。

 大区画は農業機械やICTの活用による集約型農業において、生産性の向上とともに省力化による効率性を発揮するなどメリットが多い。27年度以降、大型機械の導入を前提に過去に20a程度で面整備を実施し、再整備に当たっては50a規模での大区画化の方針が定着しているほか、平坦な圃場では畦畔撤去によるスーパー大区画への移行も可能で、国際競争力を背景に中山間地域など特殊な地域を除き、園芸作物への転換や生産力向上策として大区画による整備が常態化してきた。

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