新庁舎整備 シンポで基本設計を市民に説明(千葉市)

[2017/11/14 千葉版]
 千葉市財政局管財課庁舎整備室の主催する「第3回新庁舎整備シンポジウム」が12日、中央区の市総合保健医療センターで開かれた。熊谷俊人市長のほか、基本設計を手がけた東京大学の隈研吾教授や、久米設計の山田幸夫代表取締役会長(CEO)らが参加し、新庁舎整備に当たってそれぞれ思いを語ったほか、基本設計の内容が市民らに説明されるなどした。

 シンポジウムは2部構成で進められ、第一部では、久米設計の伊藤彰彦氏、隈研吾建築都市設計事務所の服部一晃氏がそれぞれ新庁舎の基本設計の概要を説明。続けて、28年度まで市本庁舎整備検討委員会の委員を務めた柳澤要委員長(千葉大学大学院教授)をはじめとする元委員5人が登壇。基本設計者に対し「市が発する情報を来庁者が持ち帰ることのできる工夫は」「低層棟は1・2階がガラス張りだが災害発生時は安全なのか」「ソフト面での活用方法は」などの質問が飛び出すなどした。

 第二部では熊谷市長と隈教授、山田会長が対談。まず初めに、熊谷市長が新庁舎の建て替えについて「一人でも多くの市民に関心を持ってもらいたい」としながら、事前に考え方を知ってもらう機会を作ったとシンポジウム開催の意義を説明。あらためて基本設計業を通じて感じたことを二人に説いかけた。

 隈教授は新庁舎について「海と陸をつなぐ交差点」だと評し、両方を活性化する重要な場所であり、都市をいかにプランニングしていくかという点をあらためて感じたと述べ、同市役所に限らず、全国的に市民の関心事が防災面に向いているとして、市庁舎周辺に医療団体やライフライン関連企業が立地していることについて、発災時に「ある意味最強のチームができる可能性がある」とポテンシャルの高さを示した。

 山田会長も、ここ最近で庁舎は大きく様変わりし、発災時には病院と同じく市庁舎が戦国時代の「城」であり、戦いの際の「砦」となっている傾向を指摘。職員をどれだけ守れるかが肝要で、市民への対応がどれだけ図られるかが重要であり、同市の新庁舎には最新の機能が施されている点を説明しながら「あとはソフト面のシンクロナイズが必要」だとした。

 二人はまた「使う側に何を期待するか」という熊谷市長の問いに、山田会長は他の地域での病院の設計の際に現場で働く医師の意見を取り入れたことを例に挙げながら「使う側の意見がバックボーンとして必要」だとし、隈教授はインフラとの連動性を挙げ、庁内の部署全てが一緒になって話し合ってほしいとし、そのためのスペースをハード面では用意したと述べ、ソフト面での無限性を説いていた。

 山田会長はまた「古い庁舎を古いままにしておくのは未必の故意」だとし、新庁舎では天井を排して鉄骨をむき出しのままにしていることや、空調機器を床下に配して下から風が吹き出すような仕様とするなど防災面での配慮を強調していた。

 シンポジウムに駆け付けた市民との質疑応答で、特筆すべき「隈教授ならではの発想」との問いに対し隈教授は、1・2階吹き抜け部に設ける「市民ヴォイド(空洞)」と、「庇」のある「まちかど広場」の存在を挙げるなどしていた。

 新庁舎は基本設計の段階で現庁舎を南東側(臨港プロムナード、モノレール側)と南西側(みなと公園側)にそれぞれ低層棟と高層棟をL字型に整備する計画。敷地面積約2万9000平方mに対し、建築面積6800平方m、S造(基礎免震構造)11階(塔屋1階)建て延べ約4万9400平方m、最高高さ約53m、概算事業費には約310億円をそれぞれ見込んでいる。

 今後は建て替えの是非の判断を含め、従来方式やデザインビルド(DB)方式など整備手法を決定。きょう14日には市議会新庁舎整備調査特別委員会(森茂樹会長)から熊谷市長に充てて「新庁舎整備の進め方」について要望書が提出されることになっている。

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