減災目標の共有を 大規模氾濫へ対策協議会(千葉県土整備部)
[2017/5/31 千葉版]
千葉県大規模氾濫に関する減災対策協議会は30日、第1回の協議会を中央区の千葉市文化センターで開いた。国土交通省が策定した水防災意識社会再構築ビジョンに基づくもので、事務局となる県土整備部河川環境課の渡邉浩太郎課長は「減災対策のため目標を共有して、ハード整備とソフト対策を一体的に進めていく取り組みを行っていきたい」と参加者に呼びかけた。30年1月に予定している第2回の協議会で、擬態的な取組方針などを設定する方針だ。
関東・東北豪雨などの大規模災害を踏まえ、国土交通省では同ビジョンを27年12月に策定。これに基づき県の管理河川を対象として、減災のための目標を共有し、一体的、計画的なハード・ソフト対策を進めるため、千葉県では国、県、市町村、河川管理者などからなる同協議会を開催したもの。
協議会の下には[1]利根川[2]江戸川[3]東京湾[4]九十九里[5]房総──の5圏域会議を置き、協議会の運営に必要な情報交換、調査、分析、減災対策などの各種検討、調整を実施。土木事務所ごとに設置する減災対策会議からの取り組み方針等に関して、関係機関から意見を徴収する。
圏域ごとの土木事務所は[1]柏、印旛、成田、香取、銚子[2]葛南、東葛飾[3]千葉、君津、市原[4]海匝、山武、長生[5]夷隅、安房。各土木事務所減災対策協議会では、管内の現状、課題、取り組み方針などを検討。土木事務所ごとにアンケート調査結果や取り組み方針などの取りまとめを行う。
8月から9月にかけて各土木事務所減災対策会議を開き、10月の各圏域の担当者会議を経て、30年1月を目途に第2回の協議会を開催し、設定する目標や取り組み方針を設定。その後は1年に1回程度、減災対策会議、協議会を開催し進ちょく状況などを確認する。
主催者を代表してあいさつに立った渡邉課長は、28年8月に発生した台風が東北地方などに上陸し、岩手県では県の管理する中小河川で氾濫被害が発生し尊い人命が失われたことや、27年に茨城県常総市で鬼怒川が氾濫したことなどを受け、国土交通省が水防災意識社会再構築ビジョンを策定したことを説明。
施設では防ぎきれない洪水が発生することを認識して、減災対策協議会を設置しているとし、県でも管理する中小河川についても水害の発生を前提とした減災対策協議会開催すると、協議会の意義について話してから、「減災対策のため目標を共有して、ハード整備とソフト対策を一体的に進めていく取り組みを行っていきたい」と述べた。
議事では、事務局から▽協議会設立趣旨▽水防災意識社会再構築ビジョン▽千葉県大規模氾濫に関する減災対策協議会▽県管理河川の特徴及び現状の減災に係る取り組み状況の共有▽一宮川(茂原市)タイムライン(試行案)の概要▽今後の取り組み▽千葉県大規模氾濫に関する減災対策協議会の進め方──について説明。質疑応答も行われた。
このうち、県管理河川の特徴及び現状の減災に係る取り組み状況については、河川、排水機場の状況が説明された。それによると県管理河川は、戦前から一部河川で改修事業が行われてきたが、高度経済成長期を迎える中、度重なる災害が発生。これを契機に短期間で集中的に被災箇所を復旧する改良復旧制度を利用して、河道整備を中心とした治水対策が進んだ。
また、高度経済成長に伴う水需要への対応、かつ洪水被害の軽減に資するため、河川総合開発事業によるダムを整備。その後、住宅開発に伴う河川事業などにより整備の進ちょくが図られ、現在、おおむね時間雨量50mm相当の降雨(年超過確立10分の1)に対応した河川整備を進めている中で、整備必要区間における整備率は57.2%(27年度末現在)。
県が管理する排水機場や水門などの河川管理施設は、人口や資産が集中する県北西部を中心に設置され、低い土地において高潮や洪水などから地域を守る重要な施設となっている。
特に昭和40~50年代に建設されたものが多く、老朽化に伴う不具合も発生しており、県管理の排水機場23施設のうち、施設が停止した場合に社会的景況が特に大きい14施設について、長寿命化計画を策定し、機器の点検・整備・更新の実施により、施設の長寿命化を図っている。
協議会で減災のための目標として示された内容は次の通り。
【5年間で達成すべき目標】
県管理河川における大規模水害に対し「逃げ遅れによる人的被害をなくすこと」「地域社会機能の継続性を確保すること」を目指す。
【目標達成に向けた取り組み】
▽水害リスク情報等を地域と共有することにより、要配慮者利用施設等を含めて命を守るための確実な避難を実現する
▽治水対策の重点化、集中化を進めるとともに、既存ストックの活用等、効率的。効果的な事業を推進し、被災すると社会経済に大きな影響を与える施設や基盤の保全を図る