防災学習施設6月着工 東松島の学校改修し整備 事業費が3億円(貴凛庁)

[2017/4/22 宮城版]
 宿泊施設運営や防災・危機管理教育などを手掛ける貴凛庁(きりんちょう、東京都千代田区、江口紀代子代表取締役)は、東松島市の旧野蒜小学校を改修し、体験型の防災学習施設「きぼっちゃ」を整備する。宿泊機能や物産販売機能を備えた施設とする計画で、6月中旬に改修工事に着手する予定。来年4月の全面オープンを目指す。改修事業費は設計・工事を含め約3億円を試算。現在は建築確認申請の手続きを進めているほか、施工者の選定に向け数社から見積りを取っている段階だ。

 旧野蒜小は、既存校舎がRC造3階建て延べ約2500平方mの規模。野蒜字亀岡地区に位置しており、震災津波で1階まで浸水した。体育館はすでに撤去済み。敷地面積は9310平方m。

 防災学習施設は、1階に物産販売店や食堂、入浴スペースなど、2階に防災学習スペース、3階に宿泊所や多目的室などを配置する計画。校庭には駐車場を確保するほか、バーベキューなどができるスペースを設ける。

 物産販売店は、地元の海産物や農作物を取り扱う。海産物は調理スペースを設けてカキなどを焼く。農作物はスムージーコーナーを置いてジュースを提供する。客席は食堂を含めて150席程度を用意する。入浴スペースは、実際に温泉を引くわけではないが、小さな日帰り温泉のイメージで利用してもらう。

 防災学習スペースは、デジタル映像を使いながら災害状況やその対応策などを勉強できるようにする。最も広いスペースには小・中学生向けのボルダリング施設やネット遊具、AEDの体験コーナーなどを設置する予定。導入機器などは今後に具体化する。

 宿泊所は、8人用の大部屋と2人用の小部屋を用意し、最大で68人が宿泊できるようにする。ターゲットは県内外の旅行者や外国からの観光客など。貴凛庁が社員研修に利用することや、休日に学生が宿泊することも想定している。多目的室は研修や防災学習などに活用する。

 施設名の「きぼっちゃ」は「希望」「防災」「フューチャー」を組み合わせた造語。改修事業費の一部は、県の沿岸部交流人口拡大モデル施設整備事業の補助金を活用する考えで、3月に交付決定を受けた。東日本大震災から7年目を迎える来年3月11日には、プレオープンして追悼セレモニーを開く予定。

 津波被害を受けた学校の利活用に向けては、同市が27年度に民間の事業者を募集し、J・M・S(東京都千代田区、繁田信之代表取締役)が優先交渉権を獲得。貴凛庁はJ・M・Sの子会社として28年7月に設立、すでに独立して株式会社となっている。J・M・Sは自衛隊のOBが中心となって設立・運営する株式会社で、人材派遣業などを手掛けている。

 なお、旧野蒜小の敷地には、郵便局、消防署兼派出所、市民センターの仮設施設3棟が建っている。市民センターは移転済みで、建物を改修工事の詰め所に使う考え。それ以外は年内いっぱい事務所として利用し続ける見込み。

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