改修費が27億円 28~33年度で施工(阿武隈土地改良)
[2016/9/8 宮城版]
名取川頭首工は、フィックスドタイプの全可動堰で、同川の河口から12.2kmの地点に位置している。計画高水量は毎秒3900立方m。取水量は左岸が毎秒0.256立方m、右岸が同7.515立方m。
主な施設は、土砂吐が15m×3.4mの鋼製ローラーゲート1門、洪水吐が36.6m×3.4mの鋼製ローラーゲート3門、魚道が2m×7mの階段式魚梯型で左右2カ所。取水施設は鋼製スライドゲートで、左岸が1門、右岸が2門。
管理状況を見ると、農水省、県企業局、仙台市水道局の共同施設で、名取土地改良区が施設管理者となっている。昭和60年に完成してから30年以上が経過し、老朽化が目立っている。過去には電気設備の不具合や操作部品の脱落などにより、ゲートが操作不能になったこともある。
耐震面では、門柱部や水切り部の堰柱が、大規模地震動に対して必要なせん断耐力を有していない。管理橋についても、単純合成銘桁とプレテンション方式単純ホロースラブ桁となっているが、支障構造の地震力や落橋防止構造が耐震基準を満たしていない。
国営施設応急対策事業では、名取川頭首工の機能保全に向けた改修と耐震改修を一体的に進めることで、農業用水を安定供給するとともに、施設の維持管理費を軽減させる。名取川地区の受益面積は仙台市、名取市、岩沼市の計2653ha。
本年度は事業費に1億5000万円を確保した。これまでに頭首工の実施設計と耐震性能照査、取水ゲートの実施設計を三祐コンサルタンツ(仙台支店・仙台市青葉区)に委託した。年度内に発注を予定する格納庫の改修工事は、外壁などが対象となる。
29年度は右岸非常用ゲートの改修を予定。30年度からは4カ年で本体施設の改修を予定しており、右岸側から順次、10月~4月に河川内を締め切って工事を進める。
国営施設応急対策事業の内容は次の通り。
《不測の事態への備え》
▼ゲート開閉装置=部品交換、更新
《老朽化対策》
▼取水口=断面補修工、塗装、部品交換、開閉装置更新▼取水堰=ひび割れ補修工、断面修復工、摩耗対策工、塗装、部品交換▼付帯設備=ひび割れ補修工、断面補修工▼管理施設=ひび割れ補修工、壁塗装工、スレート壁補修工、高欄更新、電気設備更新
《耐震化対策》
▼堰柱=鋼板巻立工法、鉄筋コンクリート増打ち工法▼管理橋=落橋防止構造▼洪水吐ゲート、土砂吐ゲート=材質変更による補強工法