大和町落合に遊水地群 吉田川の上流治水で 計画段階評価を了承(鳴瀬川整備懇談会)
[2016/9/7 宮城版]
第15回鳴瀬川水系河川整備学識者懇談会(座長:田中仁東北大学大学院工学研究科教授)が6日、TKPガーデンシティ仙台勾当台(仙台市青葉区)で開かれた。昨秋の関東・東北豪雨で洪水被害が起きた吉田川の河川整備について計画段階評価が行われ、国、県が示した吉田川上流部の治水対策案が了承された。今後、新規事業化を目指す。洪水被害が甚大だった黒川郡大和町落合地区に、治水容量200~300万立方m規模の遊水地群を整備する方針。事業費130億円を見込み、34年度の完成を目指す。
同懇談会には大学教授や沿川自治体関係者、国土交通省東北地方整備局、県土木部の担当者ら約50人が出席。6月に開いた第14回懇談会で示した整備方針案について、その後実施したパブリックコメントの結果などが報告された。
鳴瀬川水系のうち、吉田川は昨秋の関東・東北豪雨で増水し、大和町内など沿川約20kmにわたって計画高水位を上回った。その結果、大和町内3カ所で越水した。特に吉田川と善川、竹林川の3河川が合流する同町落合地区で甚大な洪水被害が起きた。
東北地方整備局は吉田川上流部の治水対策案として、新規ダム建設を含めた8案を挙げた。その中から目標達成および実現可能な案として▽新規ダム建設+河道掘削▽遊水地群整備+河道掘削▽河道掘削▽ひき堤+河道掘削──の4案を整備方針の候補に絞った。治水安全度やコスト面、実現性、持続性などを考慮した結果、落合地区に遊水地群を整備し、同地区付近の河道を掘削することが最も適切と判断。同懇談会もこれを対応方針とすることを了承した。
落合地区に整備する遊水地群の整備位置は、現段階では決まっていない。今後、詳細な調査を実施するとともに、地域との合意形成を図って用地などを確保していく。河道掘削については、河口から28.5km地点~同31.7km地点を掘削する方針。掘削量は36万6000立方mを見込む。堤防も1000m程度整備する。
完成までの費用として、整備局は約130億円を試算した。このうち、遊水地群の整備費は約100億円。当面の事業として、34年度の完成を目指して事業を進めていく。